山手線で反時計回りにひとまわりすると、

田端を過ぎて、山手線と京浜東北線が分かれる箇所、

逆から言えば、左の石垣から急に視界が開ける崖の上に一軒の家がある。

 

鋭角の、小高い場所に建つので、

ちょうど大きな船の舳先に、家が建ってるみたいな形である。

あそこ、ピンポイントで住みたいんだよね。

 

今日は有楽町から、右回りの山手線に乗ろうと思って、

左回りに乗ってしまったのであるが、

山手線は、右回りでも左回りでも目的地に着くから便利だよね。

 

50年前に初めて東京に出てきた時も、

まずは、山手線で一周して、いたく感動した。

緑豊か、広い森がある、なんて美しい都市!

 

線路の両脇の雑草も、石垣のコケも、よそ様のお庭も、緑が美しい。

麗しい緑の景色に目を奪われていた時に、

あの、先っぽに建つ家が目に入った。おお、なんじゃあの家!!

 

以来、住みたい家は、田園調布でもなければ、

吉祥寺でもなく、白金や代官山でもなく、

あの煤けた色の中に建つ、あの田端の小さめの家になった。

 

ちょうどよい高さ。

ぐ〜んと開けた視界。

上階にも下階にも音で煩わされる心配のない、隣もない一軒家。

 

その景色を想像するに、前方から次々にやってくる電車が、

右と左にわかれる。何十本もある線路には常に電車が通る。

電車の行く先、見知らぬ田舎を思い描きながら、線路を見下ろす日々。

 

高い所が大大大の苦手で、

うるさいのが大大大大っ嫌いなきなこではあるが、

あの家には住みたい!

 

宝くじが当たったら、大きめのキャリーバッグに札束をぎっしり詰め込んで、

ある日、あの家の玄関に立つ。

ピンポ〜ン! 「すみませ〜ん! この家売って下さ〜い。」

 

ま、隕石に当たることはあっても、宝くじに当たることはないな。

…真冬の昼の夢。

それよか、すでに〝鉄ちゃん〟が住みついてるかもね。