去る2月某日、天気図が典型的な冬型の気圧配置を示す、風の冷たい日であった。コムギコは、某麹町税務署で、「電話で予約をしていなかった」という理由だけで、受付で門前払いを食らい、憤懣やる方ないといった表情で私の前に現れた。

怒りを内に秘め、その経緯を淡々と語る。税務署に電話をせずに行った…たったそれだけのこと。それが事の発端であった。その怒りのほどは、動物園の檻の中を行ったり来たりする熊のように、室内を歩き回りながらパンを食べる、その仕草にも現れていた。

冷静に考えるならば、受付の人間は、公務員である。従って、あくまでもマニュアル通りの対応を心掛け実行しているだけである。公務員にあっては、「臨機応変のお客様対応」などということは決して考えてはならない。

税務署側から見れば、あの日、業務上では、客との対応において何らの瑕疵もなかった。「電話をしてから、窓口に来る」というのは、税務署側にしてみれば周知徹底した事項であり、日本国民は皆、子供から年寄りまでが知っていて当然のことであった。

ここで、受付の人間が、「客が、何も知らないで直接ここに来た」という理由だけで、例外的に親切な対応をしたら、後刻、その受付の人間は上司の厳しい叱責を受けるだろう。厳重注意もしくは訓戒処分を受けるやもしれぬ。そう思ったコムギコは、煮えたぎる怒りを静かに腹に収めたまま、その日一旦は帰途についた。

そして数日後、コムギコは、それでもやっぱり税金を納めたいという、ただそれだけの一途な思いを胸に、再チャレンジをしたのである。つまり、何がなんでも、途中、どのような困難に遭遇しようとも、必ず税金を納める。それは義務であるから、という悲壮感漂うまでの、一日本国民の強い使命感に基づき、あの時の悔しい思いを胸に抱きつつ、そんなことも知らんのかという冷たい視線の砲撃の隙間をかいくぐってでも、再び税務署へ行こうと固く決心したのだった。
だが、その前に、まず電話をせねばならぬ。

(場面急転・文体急変)

…ん?…んん??…
ないじゃん!
予約しようにも、電話番号がないじゃん。。。

なんでぇ〜〜??
電話しろっても、あん時もらった案内に電話番号がないじゃん!!
どうやってあそこに電話すんのよ〜。

コムギコ姫は、手にした「予約してから来て下さい」という
A4の案内チラシのどこにも電話番号が書いてないことに、
またたび、…じゃなかった、ふたたび怒り心頭!

税金なんか真面目に納めるのやめなよ〜。払う税金なんか、ないよ。
と、いつもながら、上っ面しか人の話を聞いてないビンボーきなこは、言った。
そんな書類、読むだけでも、時間のムダだよ。

いや、それはイケマセン。
税金はきちっと納めねばイケマセヌ。
…税金は国のためになるんです、と、真剣なコムギコ姫。

でもさ、「必ず電話予約しろ」と言いながら、
電話番号を書いてない税務署は、
いったい、何様?

今回受けた親切(!)のお返しはいつかきっと…。のし付けて…。羽つけて…。
受けた恩(!)は必ず返さねばなりませんから。
…と、再び〝昔話風〟の結末を迎えるのでありました。

なるか、「コムギコ姫の恩返し」? 乞うご期待。